日本臨床細胞学会雑誌
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十二指腸乳頭部に発生した小細胞癌の1例
出射 由香釜田 里江南 香織平手 ゆかり北澤 荘平前田 盛
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1998 年 37 巻 6 号 p. 598-602

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抄録

十二指腸乳頭部に発生した小細胞癌を経験したので報告する. 症例は68歳女性で, 平成9年3月に心窩部痛出現, 当院外科入院し, 各種検査の結果十二指腸乳頭部癌との診断にて手術施行された. 術中迅速診断に提出された膵周囲リンパ節からの捺印標本ではN/C比の大きい小型の腫瘍細胞がきめ込み細工状の配列を呈しており, 核形は円形ないし類円形で, クロマチンは細顆粒状であり, 小細胞癌を疑わせる所見であった. 組織学的には胞体に乏しく濃染する核を有するやや小型の腫瘍細胞が充実性に増生しており, 高度のリンパ管侵襲を認めた. 免疫組織化学にて腫瘍細胞はNSEに陽性を示し, 電顕にて腫瘍細胞の胞体内に内分泌顆粒を認めた. 以上の所見より十二指腸乳頭部原発の小細胞癌と診断した. 乳頭部原発の小細胞癌は非常にまれであるが, その診断には腫瘍の捺印細胞診にて得られる細胞学的所見は非常に有用であると思われた.

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