日本臨床細胞学会雑誌
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漿膜面術中迅速擦過およびタッチスメア細胞診が確定診断に有用であった癌性胃幽門狭窄の1例
金子 隆子望月 衛猪狩 咲子箱崎 半道
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1999 年 38 巻 1 号 p. 71-75

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抄録

漿膜面の術中迅速擦過およびタッチスメア細胞診により確定診断に至った癌性胃幽門狭窄症の1例を報告する. 症例は57歳女性. 悪心・嘔吐を主訴に来院. 上部消化管X線, および内視鏡検査で胃幽門部限局性の全周性狭窄があった. 内視鏡下生検を含む諸検査で確定診断に至らず, 開腹術を施行. 開腹時, 胃幽門部に大きさ4×4 cm大の腫瘤があった. 同部漿膜面の迅速擦過細胞と, 滅菌プレパラートによる直接タッチスメアを採取し迅速細胞診断を行った. 両細胞診標本中には, 異型上皮細胞が細胞集塊を形成するものと, 孤立散在性に出現するものが混在していた. 異型細胞の核は腫大し, 大小不同と核形不整が目立った. 核の偏在傾向を認めた. 核クロマチンは微細顆粒状で増量し, 細胞質はライトグリーンに淡染性, レース状であった. 胃癌の漿膜浸潤と診断し, 胃亜全摘術, リンパ節郭清術を行った. 本例は, 漿膜面術中迅速擦過および直接タッチスメア細胞診の有用性を示す好例であるとわれわれは考えた.

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