日本臨床細胞学会雑誌
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鼻腔原発の上衣芽腫と診断した1例
清水 薫原田 章子大津 久美子甘利 保子野沢 昭典原 正道大石 公直
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1999 年 38 巻 2 号 p. 151-156

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抄録

鼻腔に発生し上衣芽腫と診断した1例を報告した. 症例は77歳男性. 右鼻腔内に壊死性, 易出血性の腫瘤が認められた. 捺印細胞診は, 小型類円形で裸核状または細網状の淡い細胞質を持つ均一な細胞群からなり, 核は類円形で細か粒状のクロマチン像と小型の核小体を数個有していた. これらの中にはロゼット様配列も認められた. 組織診は, 細胞診と同様の所見を示す細胞の密な増殖と, 一部に明瞭な上衣芽腫型ロゼットを伴う腫瘍組織であり, 免疫組織学的にビメンチン, MIC2遺伝子産物抗体に陽性反応を示したが神経系抗体に対する反応は陰性であった. 電顕では細胞間接着装置, 小数のbasal bodies, microvilli, ciliaが認められた. 過去に中枢神経系以外の組織に発生した上衣芽腫の報告は2例に過ぎず, いずれにも細胞診所見は記述されていない. 本腫瘍の診断には上衣芽腫型ロゼットの同定や電顕所見が必要で, 細胞診での診断は限界があると思われる. しかし細胞診断学的にもこのような腫瘍の存在を認識し, 免疫染色などを加味し診断技術を向上させる必要があることを述べた.

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