日本臨床細胞学会雑誌
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多数の肥満細胞が認められた肺硬化性血管腫の1例
羽原 利幸広川 満良藤村 紀行橋口 正大三上 芳喜小池 秀爾
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1999 年 38 巻 3 号 p. 249-253

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抄録

多数の肥満細胞が認められた肺硬化性血管腫について報告する. 症例は59歳, 女性で胸部異常陰影を指摘され, CT検査にて右肺S10に約1.8cm大の結節が認められ悪性も完全には否定できなかったため, 胸腔鏡下右肺下葉部分切除術が施行された. 術中の捺印細胞診では, 比較的小型で均一な類円形から多稜形の細胞が集塊状, 一部孤立散在性に多数出現し, 血管結合織を芯として乳頭状に配列する細胞集塊も認められた. 出現細胞には, 核の溝が高頻度に出現し, 核内封入体も少数みられた. Diff-Quik染色では肥満細胞が多数認められ, それらの多くは細胞集塊内に観察された. 組織学的には, 充実性増殖が主体の肺硬化性血管腫と診断され, 増殖細胞巣内には多くの肥満細胞が認められた. 本例では高分化乳頭状腺癌との鑑別が困難であったが, 肺腺癌では肥満細胞は間質内に少数しか出現しないことから, 細胞診において細胞集塊内に多くの肥満細胞が認められた場合には, 肺硬化性血管腫を疑う有用な所見になるものと推測された.

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