日本臨床細胞学会雑誌
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食道原発小細胞癌の1例
中澤 功塩澤 哲久保田 理彦碓田 恭子平嶋 早百合村松 さゆり
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1999 年 38 巻 3 号 p. 268-271

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抄録

食道原発の小細胞癌の1例を報告する. 症例は78歳女性, 嚥下時の胸部違和感を主訴に受診した. 中央に浅い潰瘍を形成する中部食道後壁のポリープ状の隆起性病変を認め, 外科的切除術が行われた. 腫瘍の捺印細胞診では, 細胞相互の結合性は弱く, 胞体の乏しい裸核状の異型細胞が散在性に出現し, 境界不明瞭な重積性のある細胞集塊や一部ではロゼット状構造を示す部位を認めた. 核は円形ないし楕円形で, クロマチンは細顆粒状で著明に増量し, 肺の小細胞癌と同様の所見であった. 組織学的には, 大部分は核の濃染した小型の腫瘍細胞から成り, 免疫染色ではクロモグラニンAが陽性で, 電顕では細胞質内に限界膜を有した高電子密度分泌顆粒を認めた. 腫瘍の一部には, 角化を伴う重層扁平上皮への分化と基質の硝子化を伴った基底細胞への分化を示す領域を認め, 類基底細胞-(扁平上皮) 癌への分化を伴ったまれな小細胞癌の症例であった. 生検標本では挫滅が強くリンパ球との区別が困難であったが, 食道における小細胞癌の存在さえ念頭におけば, 腫瘍の捺印細胞像が組織型の推定に非常に有効と考えられた.

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