日本臨床細胞学会雑誌
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骨軟骨を形成する乳腺悪性腫瘍
骨肉腫の1症例
谷口 恵美子中村 美砂荊 雪楓中村 靖司横井 豊治覚道 健一尾浦 正二桜井 武雄
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1999 年 38 巻 3 号 p. 272-275

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抄録

今回われわれは, 骨軟骨形成を伴う乳腺の悪性腫瘍のうち, 骨肉腫の1例を経験したので, 細胞所見とともに報告する. 症例は57歳女性, 平成8年12月右乳房腫瘤に気付き受診. 穿刺吸引細胞診が実施された. 細胞像は散在性, またはゆるやかな結合性を示す細胞集塊が認められた. 核クロマチンは中等度に増量していたが, 比較的均一であり, N/C比の増加も著明ではなかった. しかし核分裂像が多数認められたため悪性の疑いと診断した. 背景には多核巨細胞が散見され, 炎症も考えられた. 手術標本では腫瘤は単一の病変で組織学的には乳管上皮の悪性像を示す部分はなく, 腫瘍は, 骨, 軟骨を形成する紡錘形問質細胞と多核巨細胞の2種の細胞より構成されていた. 葉状腫瘍や癌との移行が認められないことから骨肉腫と診断した. 免疫組織化学的には紡錘形細胞は, ケラチン陰性, ビメンチンが陽性であった. また背景にみられた多核巨細胞は酒石酸耐性酸フォスファターゼ陽性で破骨細胞への分化を示していた.

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