1999 年 38 巻 4 号 p. 305-311
脳脊髄液は細胞成分が乏しく, さらに細胞の変性も生じやすいことから, メンブレンフィルターを用いた細胞収集法は有用と考えられる. しかし, コスト高をはじめ種々の問題点を有しているため, ほとんどの施設で導入されていないのが現状である.
われわれは, メンブレンフィルター法 (FILCUPSuper) を用い, 細胞収集能, 吸引圧変化による細胞変性, 小細胞の捕捉能, 特殊染色および染色標本の保存性について検討し, 髄液13例に応用した.
その結果, 本法は操作性, 細胞収集能および細胞変性抑制の点において優れており, さまざまな特殊染色にも対応できることから, 有用な塗抹手段と思われた. 吸引圧は細胞変性の度合いや小細胞の捕捉能に関係し, 緩やかに吸引することが適切な標本を作製する上で重要と思われた. 本法を髄液に応用したところ, 判定不能例が減少し, 診断困難であった症例が容易に診断された意義は高く, コスト高になる問題はあるものの, 細胞成分が乏しい検体など選択的に利用することで, 細胞診へ導入可能と考えた.