38 巻 (1999) 4 号 p. 323-327
今回われわれは, 組織学的に耳下腺上皮筋上皮癌と診断された症例を経験したので術前の穿刺吸引細胞診, 臓器摘出後の穿刺吸引細胞診の細胞像をあわせて報告する. 症例は60歳, 男性, 以前より右耳下腺腫脹に気付くも放置, 最近増大傾向のため, 当院耳鼻科を受診した. 穿刺吸引細胞診にて偽陽性のため, 腫瘤摘出術が施行された. 術前の穿刺吸引細胞診では, 硝子様物, 裸核状細胞を背景に大小2種類の細胞集塊を認めた. 大型の細胞は, やや疎な細胞集塊を形成し, 細胞質は豊富で核は円形から類円形, 核小体は明瞭, 小型の細胞は密な細胞集塊を形成し, 細胞質は乏しく, 核は類円形, 核小体は不明瞭だった. 一部では, 管腔様構造を示した. 組織学的には硝子化した問質によって区画された二相性を示す腫瘍細胞がみられた. 免疫組織化学的検索では, 前者の細胞でEMAが陽性, 後者の細胞でSmooth Muscle Actinが陽性であった.
術前の穿刺吸引細胞診では, 大小2種類の細胞を同一のものと考え判定に苦慮したが, 細胞診上の特徴的像を知れば, 術前の穿刺吸引細胞診で確定診断は可能と思われた.