日本臨床細胞学会雑誌
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早期再発乳癌と非再発乳癌の細胞学的検討
河野 公成宮山 東彦西村 令喜馬場 敏夫島本 浩二松本 律男梅田 かおり兼本 真由美
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1999 年 38 巻 5 号 p. 408-415

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抄録

術前の乳腺穿刺吸引細胞診 (FNAs) で早期再発群と非再発群を比較することで, 両者間の細胞所見に相違が見出せるかどうかを検討した. 対象は1990~1996年に根治的手術が行われた症例の中から, 術前にFNAsが施行された58症例を抽出し, リンパ節転移および再発の有無により4群に分類し, 細胞学的に12の形態的項目 (核長・短径, 核形, 核面積, 核の大小不同, 核小体長・短径, 核小体面積, N/C比, 2.5μm以上の核小体出現率, 核分裂指数, 壊死の有無) に関して検討した. その結果9項目でリンパ節転移の有無に関係なく早期再発群の方が非再発群に比べ有意に大きい値を示した (P<0.001).その項目を中心に細胞学的異型度のスコア化 (各項目0~1, 0~3) を試み, スコア合計を5以下, 6以上で区切ると有意に早期再発群の推定が可能となった (P<0.001). またこの再現性をrnodified Blackのnuclear gradingsystem (NGS) と比較検討した結果, modified Black法によるNGSを用いた場合の一致率は13/58 (22.4%) だったのに対し, われわれのscoring systemを用いた場合は, 45/58 (77.6%) と高い一致率が得られた (P<0.001). つまり細胞学的異型度はn因子から独立した予後因子であり, われわれのscoring systemは早期再発群の推定に有用である.

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