1999 年 38 巻 5 号 p. 445-448
胃粘膜下腫瘍の穿刺吸引細胞診で腺癌細胞が認められた膵癌の1例を経験したので報告する.
症例は69歳, 男性. 胃粘膜下腫瘍の精査を目的に受診した. 胃体部後壁に約20mm大の粘膜下腫瘍を認め, 超音波内視鏡検査では腫瘍は胃壁第3層 (粘膜下層) から4層 (固有筋層) に存在する嚢胞性病変であった. 同部位から内視鏡下穿刺吸引細胞診を実施した. 腺細胞の小集塊が散在性に認められ, 細胞は比較的小型円形であった. 核の偏在, 核クロマチンの濃染がみられ, 核小体の肥大する細胞も認められた. PAS染色標本では細胞質が陽性を示した. 以上より腺癌細胞と診断された. 胃の悪性腫瘍の診断で手術を行ったが, 術中, 膵に硬結を触れ膵癌と診断された. 腫瘍は膵体部にみられ, 直接胃壁に浸潤し, 胃壁を融解し嚢胞を形成していた. 嚢胞底部には膵癌が露出し, 一部の嚢胞内面にも一層に並ぶ腺癌細胞がみられた. 細胞診標本中の腺癌細胞は, これらの組織から剥離脱落し, 吸引されたものと考えられた.