日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣悪性ブレンナー腫瘍の1例
大下 孝史永井 宣隆上馬場 是美阪田 研一郎村上 順子重政 和志大濱 紘三
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1999 年 38 巻 6 号 p. 602-607

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抄録

卵巣悪性プレンナー腫瘍は非常にまれな腫瘍で, 特にその細胞診所見に関して詳細に記述した文献は少ない. 今回われわれは卵巣悪性ブレンナー腫瘍の1例を経験したので, その臨床経過・細胞診・組織診所見を中心に報告する. 症例は54歳, 2経妊2経産で, 下腹部痛・嘔吐を主訴に近医を受診した. その時点で腹水の貯留があり, 腹水穿刺細胞診にて悪性細胞が検出されたため, 原発巣検索目的にて当科紹介受診となった. 初診時腫瘍マーカーはSTN 2000U/ml, CA 125 1132U/mlと異常高値を示し, 腹部CT, 超音波断層検査にて両側卵巣は軽度腫大していた. 卵巣癌疑いにて開腹し, 両側付属器摘出術, 大網切除術を施行, 術後病理組織検査にて悪性ブレンナー腫瘍と診断された. 腫瘍捺印細胞診にて腫瘍細胞はN/C比が高く, 核は円形~類円形あるいは多稜形でクロマチンは粗顆粒状, 大型の核小体を有し, これらの細胞が重積性に集塊を形成したり, 時に散在性に観察された. 以上の所見は他の腺系の悪性細胞所見と類似しており, 細胞診のみから悪性ブレンナー腫瘍を診断するのは困難であると考えられた.

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