多房性の巨大ブラと無気肺の臨床診断のもと気管支擦過細胞診を施行し, 正常の中皮細胞を多数認めた66歳の男性例を経験したので報告する.細胞はシート状の集団で出現し, 核はコーヒー豆様の皺が目立つものの, クロマチンは細顆粒状で増加は認められず, 胸腹腔洗浄細胞診で日常的に経験する正常中皮細胞に類似していた.細胞診標本からのHBME-1の免疫染色に陽性を示し, さらに免疫組織学的にもAE1/AE3に陽1生, EMAとvimentinはともに陰性, MIB-1 (Ki-67) の陽性率は0.2%と増殖性はきわめて低く非反応性の正常中皮細胞と考えられた.
気管支擦過細胞診で臓側胸膜上の中皮細胞が採取されたものと考えられた.まれながらもこのような事例が存在することを認識しておく必要があると思われた.