日本臨床細胞学会雑誌
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乳頭状腎細胞癌の1例
酒井 優渡辺 伸一津田 富夫佐藤 仁哉桑原 紀之
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2000 年 39 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

乳頭状腎細胞癌の1例を経験した.症例は42歳女性で, 食欲低下, 体重減少を主訴に精査入院.腹部超音波検査で左腎に巨大腫瘍が指摘された.腎血管造影では, hypovascularで辺縁不整な像を示した.根治的腎摘除術が施行され, 15×10×10cm大の腫瘍が認められた.腫瘍の穿刺吸引細胞像は, ごく少数の泡沫細胞を背景に, 乳頭状配列を示す腫瘍細胞集塊が多数認められた.孤立散在性に出現する細胞は, 核が偏在し, オタマジャクシ状あるいはラケット状の形態を示していた.組織学的には, 血管間質を軸に乳頭状構築を示しつつ増殖し, ごく一部の間質に泡沫状組織球の集籏が認められた.免疫組織化学的に遠位尿細管系マーカーに陽性を示し, high molecular weightcytokeratinに陰性で乳頭状腎細胞癌として矛盾しない結果であった.また, ビメンチンが基底側の細胞質に極在して陽性を示し, 電顕的にも同部位に一致して中間フィラメントが確認された.細胞学的に, 乳頭状細胞集塊の出現とともに, オタマジャクシ状あるいはラケット状細胞の出現は乳頭状腎細胞癌の一つの特徴と考えられた.

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