日本臨床細胞学会雑誌
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ダグラス窩に発生した明細胞腺癌の1例
前原 大介上坊 敏子佐藤 倫也池田 泰裕関本 僚平蔵本 博行
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2000 年 39 巻 1 号 p. 9-13

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抄録

明細胞腺癌は子宮内膜症と関連のあることが報告されているが, 内膜症の好発部位であるダグラス窩に発生することはまれである。われわれは, ダグラス窩に発生した明細胞腺癌の1例を経験し, その診断に細胞診が有用であったので, 細胞所見・病理所見を臨床経過とともに報告する.
症例は54歳, 不正性器出血を主訴に平成10年2月6日近医を受診したところ, 膣癌と診断され, 当院を紹介受診.子宮・両側付属器は正常で, 膣後方に発生した腫瘍により膣は膨隆していたが, 膣粘膜は平滑だった.膨隆部を穿刺し, 腫瘍内溶液および内腔の擦過細胞診を施行した.大型の核・豊富な明るい細胞質を有する細胞が, シート状・乳頭状に出現し, hobnail patternを示唆する集塊もあった.組織学的には, 腫瘍細胞は明るく豊富な細胞質を有し核小体が目立つ異型性の強い細胞からなり, 腫瘍は充実性・乳頭状または小腺管を形成しっっ発育していた.hobnail patternを呈する部分も多く, 核は大型で大小不同性・多形性に富み, 1~2個の明瞭な核小体を有していた.ダグラス窩腹膜に子宮内膜症の所見を認めたことから, 内膜症に由来する明細胞腺癌の可能性が示唆された.

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