日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
耳下腺好酸性腺腫の1例
清水 進一浅野 正宏山田 哲司澤木 由里香山田 真人赤澤 康弘坂田 ふみ子小林 寛
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 40 巻 1 号 p. 38-41

詳細
抄録

背景:好酸性砂粒細胞性腫瘍はまれな唾液腺腫瘍で, その細胞所見に関する報告は少数にすぎない.右耳下腺に発生した好酸性腺腫の1例を経験したので, その特徴的な細胞像, 組織像および電顕像を報告する.
症例:70歳, 女性. 右耳下腺部腫瘤を主訴に当院を受診し, 腫瘍切除術を受けた.捺印細胞標本では, ライトグリーンに好染する豊富な細砂粒状の細胞質を有す腫瘍細胞が孤在性あるいは種々の大きさの上皮性結合を示す細胞集塊としてみられた.核は類円形で明瞭な核小体をもつものもみられたが, 明らかな核異型や核分裂像は認められなかった.組織学的にも細胞診と同様の腫瘍細胞が一部腺管形成を伴う胞巣状の増生を示すが, 浸潤性増殖は認められなかった.電顕的には細胞質を充満するように多数のミトコンドリアが認められた. 以上の所見から好酸性腺腫と診断した.
結論:細胞診的にも特徴的な細胞所見から好酸性砂粒細胞性腫瘍の推定は可能であるが, 腺腫と腺癌の鑑別は時に困難なこともあり, 詳細な組織学的検索が必要であると考える.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top