日本臨床細胞学会雑誌
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乾燥迅速パパニコロウ染色の術中診断への応用
湊 宏堀田 知子久富 元治野々村 昭孝太田 浩一松岡 克優宮本 真紀子車谷 宏
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2001 年 40 巻 3 号 p. 249-256

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抄録

目的:乾燥迅速Papanicolaou染色 (乾燥Pap.) を試み, 術中迅速診断における有用性について検討した.
方法:術中迅速診断例482検体と術中腹腔洗浄液51検体を対象とした. 全身32臓器の組織1が含まれ, 良性311例, 悪性171例であった. 検体到着後, 乾燥Pap. と凍結切片を作成し, それぞれに診断を行った. Papanicolaou染色 (Pap.) とギムザ染色用の標本も作製し, 洗浄液では粘液染色用の標本も作製した.
成績:乾燥Pap. の手技は迅速かつ簡便であり, 塗抹後2分以内で鏡検できた. 細胞像はPap. とやや色調が異なったが, 基本的には類似していた. 透明感と色調のバラエティある細胞像が観察され, 核クロマチンや核小体も明瞭であった. また, 背景の赤血球は溶解し, 細胞観察が容易であった. 乾燥Pap. の正診率は97.3%であり, 通常のPap. は96.1%で, 凍結切片は98.2%であった. 乾燥Pap. と凍結切片をあわせた診断では正診率は99%に上昇した.
結論:乾燥Pap. は種々の利点を有し, Pap. に勝るとも劣らない染色法と考えられた. 細胞採取や塗抹方法に注意すれば, 術中迅速診断に十分応用でき, 利用価値の高い染色法と考えた.

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