日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
細胞診で悪性を疑ったいわゆる甲状腺異型腺腫の1例
鍵弥 朋子谷口 恵美子中村 美砂中村 靖司森 一郎要 明雄覚道 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 40 巻 3 号 p. 290-293

詳細
抄録

背景:細胞診標本に, 多数の巨細胞を混じる高度の細胞異型がみられた, 甲状腺異型腺腫の1例を経験したので報告する.
症例:61歳, 女性. 甲状腺右葉に結節性腫瘤あり, 穿刺吸引細胞診が行われた. 細胞像は, 全体に大型の細胞が多数出現. 濾胞構造をとる集塊の周囲に, 孤立散在性の細胞もみられた. 核は高度の大小不同がみられ, 核形不整, 濃染, 核縁の肥厚がみられる. 核溝, 核内細胞質封入体が少数あることから乳頭癌を, 核異型の強さから未分化癌を, 濾胞構造を示すことから濾胞癌を疑った.
組織所見は, 被膜に包まれた結節性腫瘤で, 腫瘍細胞は核縁肥厚, 核溝, 核の濃染, 大小不同がみられ, 巨大な核をもつ奇怪な細胞も散見された. 乳頭構造はなく充実性増生, 濾胞構造を認め, 被膜浸潤, 脈管侵襲がみられないため, 異型腺腫と診断された.
結論:甲状腺細胞診をみるときは, 個々の細胞異型から良・悪性を判定するのではなく, まず腫瘍の組織型を念頭に置いてから, 乳頭癌の細胞所見の有無や構造異型・細胞異型をみていくことが必要だと思われた.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top