日本臨床細胞学会雑誌
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唾液腺腺様嚢胞癌の組織像と細胞所見
三宅 康之広川 満良則松 良明高須賀 博久
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2001 年 40 巻 4 号 p. 405-410

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抄録

目的:腺様嚢胞癌の細胞所見の解読には組織像を把握していることが必須であることから, 特に組織像との対比を焦点に, 腺様嚢胞癌の診断に役立つ細胞所見や鑑別診断についてまとめることにした.
組織および細胞所見:腺様嚢胞癌は組織学的に箭状型, 充実型および管状型の3つに分類される. 細胞診標本では, 飾状型は異染性を呈する球状物が細胞集塊内あるいは背景にみられるのが特徴的である. この物質にはパパニコロウ染色で淡染性の間質性粘液 (粘液球) とライトグリーン好染性の基底膜物質 (硝子球) の二種類がある. 硝子球が出現する腫瘍の鑑別診断としては, 基底細胞腺腫, 基底細胞腺癌, 多形腺腫, 多形低悪性度腺癌, 上皮筋上皮癌などが挙げられる. 充実型は腫瘍細胞が大型細胞集塊を形成して出現し, ジグソーパズル様に配列しているのが特徴的であり, 小細胞癌や基底細胞様扁平上皮癌との鑑別が問題となる. 管状型は出現細胞は少なく棍棒状あるいは索状の細胞集塊として出現し, 多形低悪性度腺癌との鑑別が困難である.
結論:粘液球および硝子球は腺様嚢胞癌の特徴として広く知られているが, それらは腺様嚢胞癌だけにみられる所見ではないこと, また, 腺様嚢胞癌には充実型や管状型の場合もあり, 診断には多くの鑑別すべき疾患があることに留意すべきと思われる.

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