日本臨床細胞学会雑誌
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Laser Scanning Cytometry (LSC) による乳腺乳頭状病変の研究
山中 雅之九島 巳樹津田 祥子山崎 勝雄太田 秀一
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2001 年 40 巻 5 号 p. 457-462

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抄録

目的:乳腺の乳頭状病変の細胞診断においてLaserScannig Cytometer (LSC101, オリンパス社製) を補助的に使用する有用性にっいて検討した.
方法:乳管内乳頭腫8例, 乳頭腺管癌10例の穿刺細胞像, 摘出材料の組織像を検討した後, LSCで塗抹細胞標本上の腫瘍細胞核のDNA量を測定し, 通常の光学顕微鏡像との比較を行った.
成績:DNA量は乳管内乳頭腫症例のすべての症例で2峰性のdiploidpatternを示し, 乳頭腺管癌症例は2峰性のdiploidまたは多峰性のaneuploid patternを示した. 細胞学的に乳癌との鑑別がときに困難な乳管内乳頭腫症例において, aneuploidpatternとはいえないものの, 少数のDNA量の異常を示す核をモニター上で観察すると, 扁平上皮化生細胞に類似していた. しかし, 乳頭腺管癌の細胞より核・細胞質比が低い傾向にあった.
結論:通常の細胞診断では乳腺乳頭腫は良性と判定しているが, LSCによるDNA量の解析では少数ながら乳癌細胞と類似したDNA量の異常を示す細胞が含まれていることがわかった. これらの結果より今後はLSCを活用することによりDNA量の異常を示す細胞を含む乳頭腫症例の中に生物学的な悪性病変が併存している可能性や, 乳腺乳頭状病変の鑑別診断, 治療方針の決定などに役立てることが望まれる.

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