乳腺疾患の病理組織学的特徴は, 第一には組織像の多彩さにある. このことは組織型の種類の多さにあらわれているが, 同じ組織型に分類される病変でもその組織像は決して一様ではない. 第二には良悪性鑑別診断の難しさにある. 多彩な組織像を示す病変の中には, 非常に似た組織像を呈する良性病変と悪性病変が存在する. 全くの良性である硬化性腺症や乳管腺腫は浸潤性乳管癌との鑑別が問題となる. 乳管内病変に関しては常に良悪性の鑑別診断が問題となり, そこには本質的な難しさが存在する. 病理診断の整理棚として組織型は大切であるし, 誤診を防止するためにも多くの整理棚を持つ必要がある.
これらの特徴は, 当然のことながら画像や細胞像に反映される. したがって, マンモグラフィ, 超音波, MRIなどの画像診断や細胞診は組織型診断まで行ったうえで, 良悪性鑑別診断あるいはカテゴリー診断を行うべきである. それぞれが診断した組織型間の整合性の有無を確認することで, 精度の高い臨床診断を得ることができる. この際, 細胞診は画像診断を確証する立場にある.