日本臨床細胞学会雑誌
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耳介後部に発生したメルケル細胞癌
西田 秀昭橋本 哲夫池田 和隆田中 卓二勝田 省吾
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2001 年 40 巻 6 号 p. 601-605

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抄録

背景:皮膚の神経内分泌癌とも呼ばれるメルケル細胞癌の発生頻度は低く, その細胞所見に関する報告も少ない. われわれは耳介後部に発生したメルケル細胞癌の捺印細胞像を観察する機会を得たので, その細胞所見を報告する.
症例:86歳女性. 平成11年8月より左耳介後部腫瘤に気づき, 近医を受診.切除を勧められるが放置. 平成12年1月になって切除目的で当院形成外科受診. 同月術中組織診断にてメルケル細胞癌を疑い, 左耳を含めた腫瘤切除が施行された.
切除腫瘍の捺印細胞所見で腫瘍細胞は, 主にシート状に出現し, 小細胞集団も散見された. 細胞集団は, 索状配列を示し, かつ円形の腫瘍細胞を取り囲むように互いに吻合し, 三日月形に圧迫された小集団として認められた. 個々の腫瘍細胞は, ほとんどが裸核状で細胞質に乏しく, 核は円形-類円形, クロマチンは細穎粒状に増加して認められた.
結論:本疾患の診断に細胞診はあまり用いられていないが, 細胞所見は比較的特徴があり臨床所見を加味すれば診断は可能であると考えられた.

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