日本臨床細胞学会雑誌
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未分化癌成分を伴った膀胱明細胞腺癌の1例
木屋 千恵子若木 邦彦室坂 千鶴子石澤 伸
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2001 年 40 巻 6 号 p. 610-615

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抄録

背景:膀胱に発生する明細胞腺癌はきわめてまれでその報告は少ない. 今回私達は自然尿に腫瘍細胞が出現した非定型的膀胱明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.
症例:59歳, 女性. 頻尿, 肉眼的血. 尿があり, 尿閉となり受診した. 自然尿の細胞診では好中球, 赤血球, 壊死物質を背景に, 大小不同の淡明で豊富な細胞質を有する細胞と濃染性の細胞質を有する細胞が散在性に多数出現していた. クロマチンは細穎粒状に増量し, 核は偏在しており, 一部に多核巨細胞を認めた. 摘出標本では組織学的に多形性に富む腫瘍細胞が胞巣状に増殖しており, 一部で明細胞を伴う乳頭状や腺管腔を形成し, 鋲釘型細胞が管状構造をなしていた. 両者の組織像に移行を認め, 酵素抗体法の結果とあわせて膀胱明細胞腺癌と診断した.
結論:本症例では細胞診上の特徴として, 腫瘍細胞の散在性出現, 淡明で豊富な細胞質, targetoidvacuole, 細胞質辺縁の明瞭化, 核の偏在性がみられた.

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