日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
境界悪性卵巣粘液性腫瘍の再発との細胞学的鑑別が困難であった子宮頸部上皮内腺癌の1例
小椋 聖子清水 恵子小林 八郎豊國 伸哉桜井 幹己
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 40 巻 6 号 p. 636-640

詳細
抄録

背景:近年, 診断法や治療法の進歩に伴う治癒率の向上とともに, 婦人科領域の重複癌発生率が上昇している. 婦人科領域の細胞診断の際に重複癌を疑う像に遭遇することがあるが, その判定に苦慮することは少なくない.
今回われわれは, 境界悪性卵巣粘液性腫瘍の再発との鑑別が困難であった子宮頸部上皮内腺癌の1例を報告する.
症例:55歳, 女性. 3年前に右卵巣腫瘍破裂のため, 右付属器摘出術が施行され, 右卵巣境界悪性粘液性腫瘍, 腸上皮型, Ic期と診断された. 外来での経過観察中, 子宮頸部擦過細胞診にて異型腺細胞集団が認められ, 子宮頸部腺系病変あるいは卵巣粘液性腫瘍の再発が疑われた. 単純子宮全摘術および左付属器摘出術が施行され, 摘出標本の組織診で子宮頸部上皮内腺癌と診断された. 子宮体部, 左付属器に悪性所見は認められなかった.
結論:婦人科領域における重複癌の診断においては, 細胞所見のみならず臨床所見や画像診断を加味した総合的な判断が必要である.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top