日本臨床細胞学会雑誌
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唾液腺穿刺吸引細胞診
多形腺腫の診断におけるピットフォール
加藤 拓九十九 葉子諏訪 朋子徳泉 美幸高橋 久雄上原 敏敬
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2002 年 41 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

目的:唾液腺腫瘍の中で最も発生頻度の高い多形腺腫 (pleornorhic adenoma: PA) は多彩な細胞形態を示すため, 穿刺吸引細胞診で的確に診断することに難渋したり, 他の腫瘍と誤診することがある. 今回われわれは, PAの穿刺吸引細胞診と組織診との相関性およびそのpitfallsについて検討した.
対象:組織学的にPAと診断された63例中56例が穿刺吸引細胞診でもPAと正診された. PAの細胞学的形態について検討した. さらに, PAと正診できなかった7例, および他病変をPAと誤診した3例についても細胞学的・組織学的に検討した.
成績:PAの細胞像として粘液腫様間質性粘液 (96.2%), 紡錘形細胞 (88.5%), 形質細胞様細胞 (80.8%), 腺細胞 (50.0%), 石肖子小体 (23.1%), 多核巨細胞 (23.1%) および扁平上皮化生細胞 (15.4%) がみられた. PAと正診できなかった7例の細胞診断は基底細胞腺腫3例, 嚢胞性変化2例, 腺様嚢胞癌1例および腫瘍細胞を認めなかった1例であった. 他病変をPAと誤診した3例の組織診断は唾石症1例, 腺様嚢胞癌1例, 多形腺腫内癌1例であった. 感度90.3%(56/62), 特異度94.9%(56/59) であった.
結論:PAを含めた唾液腺腫瘍の穿刺吸引細胞診のポイントは以下に要約できた. 1. 穿刺吸引にて嚢胞内容液のみ, または腫瘍細胞の採取量が少ない場合には場所を変えての複数回の穿刺を行う. 2. 鏡検時に臨床所見 (年齢, 性別, 発生部位, 腫瘍の大きさ) を参考にする. 3. Papanibolaou染色およびMay-Giemsa染色標本で, 背景にみられる物質および腫瘍細胞など極少数の出現も見逃さず観察し, 採取されたすべての細胞の種類および物質を把握する. 4. これらをもとに総合的に判断し, 組織型を推定する.

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