日本臨床細胞学会雑誌
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唾液腺穿刺吸引細胞診のピットフォール
硝子球と節状構造
小野寺 清隆長尾 俊孝麻生 晃小山 芳徳石田 康生菅野 勇長尾 孝一
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2002 年 41 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

背景:近年, 唾液腺腫瘍の術前診断において穿刺吸引細胞診 (fine-needle aspiration cytology 以下FNACと略) は, その正診率の高さから広く受け入れられている.唾液腺腫瘍は特徴的な細胞像を示すものが多く, 通常その特徴像をとらえることにより診断を行っている. しかし, 特徴像は一つの疾患に限ってみられる所見ではなく, ほかの疾患の部分像として現れることもあり, それがしばしば唾液腺腫瘍のFNACにおけるピットフォールとなる. 唾液腺腫瘍の細胞診上の特徴像として硝子球hyaline globulesと飾状構造cribriform structuresがあげられる. これらの細胞像は, 腺様嚢胞癌を特徴付ける所見であるが, 基底細胞腺腫, 基底細胞腺癌, 多形態低悪性度腺癌, 上皮一筋上皮性癌, 唾液導管癌, 多形腺腫および筋上皮腫でも出現頻度に差があるもののみられることがある所見である.これをみてもわかるように生物学的態度がかなり異なる疾患が含まれるため, それらの疾患を鑑別することは臨床的に重要な意味を持つ.
目的:実際の唾液腺腫瘍のFNACにおいて硝子球と節状構造が認められた場合には安易に腺様嚢胞癌と断定せずに, 他の疾患の可能性を念頭において診断を進めていく必要がある. そのためには臨床所見を把握することもさることながら, 硝子球と節状構造にのみとらわれることなく, おのおのの疾患の細胞学的な特徴像を捉えて診断すべきであると考えられる. 本稿では, 唾液腺腫瘍の細胞診上の特徴像の一つである硝子球と箭状構造に焦点を当てて, これらの像を示す唾液腺腫瘍のFNACにおけるピットフォールについての総説的な解説を行った.

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