背景:乳腺の紡錘細胞癌はWorld Health Organization (WHO) の分類ではcarcinoma with metaplasiaの一型と考えられている。われわれは経時的に2回の穿刺吸引細胞診を行い, 細胞所見に大きな相違の認められた症例を経験した.
症例:患者は33歳女性で, 右乳頭より血性分泌物が認められ, 腫瘤を触知するようになった. 第1回目の穿刺吸引細胞診で浸潤性乳管癌と診断されたが放置していた. 2ヵ月後に行われた第2回目の穿刺吸引細胞診では, 肉腫様細胞集塊が主体で, 破骨細胞様の多核巨細胞が含まれていた. 手術標本による病理組織学的検索では, 辺縁部に充実腺管癌を認めたが, 大部分が肉腫様であった. 両者には移行が認められた.
結論:紡錘細胞癌は予後不良と考えられており, その診断は重要である. しかし, 細胞診では必ずしも, その特徴を反映しているとは限らず, 確定診断は困難であることが多い. さらに同一症例でも採取時の条件により細胞所見に大きな相違が認められる可能性が示唆された.