日本臨床細胞学会雑誌
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副腎に発生したmixed neuroendocrine-neural tumorの1例
神尾 多喜浩須古 修二大門 秀光廣田 和彦多田 修治本田 五郎志垣 信行須古 博信
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2002 年 41 巻 4 号 p. 260-264

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抄録

背景:Mixed neuroendocrine-neural tumor (以下, MNNT) は褐色細胞腫と神経芽腫群腫瘍が混合したまれな腫瘍である. 今回, われわれは褐色細胞腫と神経節芽腫からなる副腎原発のMNNTを経験したので報告する.
症例:症例は43歳, 女性. 心窩部痛を主訴に来院し, 腹部超音波検査で右副腎腫瘍を指摘された. 精査にて褐色細胞腫と診断され, 腫瘍を摘出した. 腫瘍は嚢胞状で, 嚢胞壁には暗赤色調の部分と, 壁が部分的に肥厚し黄白色調を呈する部分を認めた. 色調の異なる部分から捺印細胞診および組織標本を作製した.前者の部分では出血性背景のなかに多角形細胞がシート状集塊を形成したり, 孤立散在性に出現していた. 組織学的には褐色細胞腫であった. 一方, 後者の部分には, 神経節細胞類似の大型細胞と紡錘形細胞が混在していた. 組織学的には, 神経節細胞類似の神経芽細胞と神経細線維が増生していたことから, 神経節芽腫と診断した.
結論: 褐色細胞腫が疑われる副腎腫瘍から捺印細胞像を得る場合, 腫瘍の割面像をよく観察し, 所見の異なる複数箇所から細胞を採取する必要がある. また褐色細胞腫の細胞像をみた場合, MNNTの可能性も念頭に置き, 神経芽腫群腫瘍の成分の有無に留意する必要がある.

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