日本臨床細胞学会雑誌
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腋窩部原発アポクリン癌の2例
大谷 方子清水 亨芹沢 博美海老原 善郎中沢 功樋口 佳代子
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2002 年 41 巻 6 号 p. 433-438

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抄録

背景:皮膚原発のアポクリン癌はまれで, さまざまな抗体を用いることにより組織学的診断が可能であるが, 細胞所見の報告は少ない.われわれは腋窩部原発アポクリン癌の2例を経験し, その細胞学的特徴を検討した.
症例:症例1は49歳男性で5年前に左腋窩部腫瘍摘出術を受けたが, 局所再発をきたした.吸引細胞診ではほとんどが孤立散在性で, 一部に上皮性細胞集塊が含まれていた.腫瘍細胞は細胞質が厚くて広く, 断頭分泌を認めた.組織学的には充実性, 索状および腺管状構造を示し, 腫瘍細胞の細胞質は広く好酸性で, 断頭分泌, ジアスターゼ抵抗性PAS陽性顆粒が認められた.GCDFP-15が陽性であった.症例2は53歳の男性で, 15年前に左腋窩部腫瘤の診断を受け, 摘出術が施行された.リンパ節の擦過細胞診では比較的重積性の少ない上皮性細胞集塊が主体で, 腫瘍細胞は大型で広い細胞質, 円形から卵円形の偏在核と明瞭な核小体を持ち, 断頭分泌が認められた.組織学的には潰瘍を形成し, 腺管形成を伴い皮下脂肪織まで浸潤していた.細胞質は広く好酸性で断頭分泌が認められ, ジアスターゼ抵抗性PAS陽性顆粒を含んでいた.GCDFP-15が陽性であった.
結論:腋窩部に発生するアポクリン癌は汗腺あるいは副乳由来のアポクリン癌や転移性腺癌が鑑別となる.皮膚原発アポクリン癌は細胞診でも特徴的な像を保持しており, 詳細な検討によって推定診断が可能であると考えられた.

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