日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣癌の診断における子宮細胞診の意義
笹川 基西野 幸治本間 滋児玉 省二高橋 威
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2003 年 42 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

目的:卵巣癌の診断における子宮細胞診の意義解明を目的とした.
方法:手術を施行した表層上皮性・間質性卵巣悪性腫瘍のうち, 術前3ヵ月以内に子宮細胞診が実施された85例を対象とし, 子宮細胞診における陽性率を算出した. また, 陽性率と関連する諸因子について解析した.
成績:(1) 子宮頸部細胞診の陽性率は6%, 子宮内膜細胞診の陽性率は17%であった.(2) 頸部細胞診と内膜細胞診が同時に施行された27例中, 内膜細胞診が陽性, 頸部細胞診が陰性の症例は5例, 両者とも陰性の症例は22例であった.(3) 卵巣癌臨床進行期別に細胞診陽性率を検討すると, 臨床進行期と頸部細胞診陽性率との間に有意差が認められた (p<0.05).(4) 腹水の有無, 腹腔細胞診成績と子宮細胞診成績との間に有意な相関は認められなかった.(5) 頸部細胞診では類内膜腺癌, 内膜細胞診では漿液性腺癌での陽性率が他の組織型より有意に高かった (p<0.01).(6) 組織学的分化度と陽性率とに有意な相関はなかった.
結論:卵巣癌の早期診断の上で, 子宮細胞診は有用な検査法とはいえないと思われた. しかし, 進行例では陽性となる症例も多く, 子宮細胞診で腺癌細胞が観察された場合, 卵巣癌の可能性も念頭においた検索が重要であろう.

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