日本臨床細胞学会雑誌
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細胞診が診断に有用であったアメーバ性肝膿瘍の1例
三谷 美湖高橋 保森木 利昭植田 庄介一圓 美穂根本 禎久熊澤 秀雄
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2003 年 42 巻 1 号 p. 45-48

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抄録

背景:アメーバ性肝膿瘍は, 日常の細胞診で遭遇する機会はまれで, その報告は少ない. 今回, 細胞診が診断の根拠となった症例を経験したので報告する.
症例:49歳, 男性. 高熱と腹痛を主訴に受診. 画像上, 肝右葉に3cm大の膿瘍様病変が認められた. 8ヵ月前の中国渡航歴からアメーバ性肝膿瘍が疑われ治療が行われた. 治療開始2日後に採取された灰~黄白色調の肝膿瘍液の生鮮標本からアメーバは検出されず, 同時に提出された血清学的検査も陰性であった. しかし, 細胞診では栄養型アメーバが認められ, PAS反応やライト染色, 抗赤痢アメーバ抗体を用いた免疫染色結果から赤痢アメーバ栄養型と確定し, アメーバ性肝膿瘍と診断した.
結論:赤痢アメーバ栄養型は, パパニコロウ染色およびPAS反応で好染する内質と染色性に乏しい外質, 小型円形核と中心性のkaryosomeが特徴的で, 他の細胞成分との鑑別点となった. 確定には細胞診標本で抗赤痢アメーバ抗体を用いた免疫染色が有用であった. 感染源の特定は困難であるが8ヵ月前の中国渡航での感染の可能性が疑われた. 膿瘍液の外観や血清抗体価にとらわれず, 常にアメーバ性肝膿瘍の疑いをもって対処することが重要と思われた.

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