日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺硬癌の細胞学的特徴
硬癌の亜型別細胞所見および小葉癌との比較
南雲 サチ子春日井 務芦村 純一中泉 明彦小山 博記
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2003 年 42 巻 1 号 p. 73-81

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抄録

目的:乳腺硬癌の穿刺吸引細胞診成績と細胞像の特徴および浸潤性小葉癌 (小葉癌) の細胞所見との比較検討を行った.
方法:細胞診断成績は硬癌86例 (純粋型16例, 乳頭腺管型34例, 充実腺管型36例) を対象とした.細胞学的検討には観察可能であった硬癌74例と小葉癌14例を用いた.検討項目は, 癌細胞の出現形態, 細胞配列, 核形, クロマチン, 核小体, 細胞質内小腺腔 (ICL) で, 核面積は純粋型硬癌10例と小葉癌10例を計測した.細胞標本はPapanicolaou染色である.
成績:細胞診正診率は純粋型81.2%, 乳頭腺管型941%, 充実腺管型100%であった.硬癌全体の共通細胞所見は, 癌細胞出現数の多少にかかわらず, 索状, 箱型配列を認める症例が多かった.亜型別所見の特徴として純粋型硬癌では癌細胞の出現数が少ない症例が多く, 乳頭腺管型は細胞集団単個細胞など出現形態が多彩で, クサビ状や腺管状配列が特徴であった.充実腺管型は細胞集団や単個細胞が多数出現する症例が多かった.硬癌の3亜型の中で, 純粋型の細胞所見が小葉癌に類似していた.両者の鑑別点として, 純粋型硬癌ではクロマチンが穎粒状・密で濃染核の割合が高く, ICL出現頻度は38%と低く, 平均核面積は50.0μm2と大型で大小不同が著しかった.一方, 小葉癌はクサビ状, 腺管状配列を認めず, ICL出現頻度は64%と高く, 平均核面積は345μm2と小型で比較的均一であった.
結論:硬癌の細胞像は多彩であったが, 亜型別細胞所見は穿刺吸引細胞診における組織型推定に有用であった.

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