日本臨床細胞学会雑誌
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von Recklinghausen病に合併した肺原発悪性黒色腫の1例
前田 啓之福田 幹久徳島 武中井 勲西村 正道
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2003 年 42 巻 2 号 p. 121-125

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抄録

背景:von Recklinghausen病 (neurofibromatosis type 1: NF1) に肺原発悪性黒色腫を合併した1例を経験したので報告する.
症例:患者は45歳女性.自覚症状は特に認めていない.小学生頃よりNF1と診断されており, 1988年に左乳癌, 1994年に右乳癌でそれぞれ根治手術を施行された.その後当院通院加療中に右肺異常影を指摘され1996年6月入院した.胸部CT上, 右肺下葉の腫瘍で30mm大, 境界明瞭, 増大傾向を認めた.CTガイド下穿刺吸引細胞診にて黒褐色の微細顆粒を細胞質内に有する異型細胞を認めるほか, 多核巨細胞を含む異型細胞の存在, 核は円形や紡錘形など高度な多形性を示し核内封入体が存在するなど悪性黒色腫が疑われた.全身検索で他に異常を認めなかった.肺原発悪性黒色腫を疑い右肺下葉切除術および縦隔リンパ節郭清を行ったが多発脳転移などをきたし1997年3月に死亡した.剖検は実施できなかったが臨床的に悪性黒色腫を示唆する病変を他臓器に認めなかった.細胞像・組織像などから肺原発悪性黒色腫と診断した.
結論:NF1には悪性黒色腫を含む悪性腫瘍を合併することが多いとされる.肺原発悪性黒色腫はまれであり, さらにNF1に合併したとする報告例はなくきわめてまれな症例と思われた.組織診断にて肺原発悪性黒色腫と診断したが, 細胞診では特徴的な細胞像を示すことから悪性黒色腫を疑うことが可能であり, 術前診断に有効であった.

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