日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部紡錘形細胞癌の1例
衣笠 万里宮崎 義彦辻本 直樹瀬井 歩佐々木 正道古本 三保子古本 勝中川 敏代
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2003 年 42 巻 2 号 p. 131-136

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抄録

背景:子宮頸部の紡錘形細胞癌は非角化型扁平上皮癌のまれな一亜型である. 今回, その1例について報告し, 文献的考察を加える.
症例:42歳経産婦, 褐色帯下を主訴として受診, 子宮頸部に限局した辺縁隆起を伴う潰瘍性病変が認められた. 細胞診では上皮内癌を疑わせる傍基底型異型細胞が出現しており, 生検組織診では上皮内癌とともに紡錘形細胞からなる肉腫様病変が認められた. ただちに広汎子宮全摘術が施行された. 術後捺印細胞診では上皮内癌様細胞とともに複数個の核小体を有する大型の核と辺縁不明瞭な淡い細胞質を有する肉腫様細胞がみられた.組織診では上皮内癌成分とともに, 紡錘形腫瘍細胞の問質へのびまん性浸潤が認められ, 両者の問には移行部分がみられた. これら紡錘形細胞はケラチン (KL-1) 陽性であり, 電顕像でもデスモゾーム結合が認められたことから, 癌肉腫ではなく紡錘形細胞癌と診断された. 5年後現在, 患者は無病生存中である.
結論:本症例では早期発見・治療が可能であったが, 女性性器の紡錘形細胞癌は予後不良例も多く, その点は癌肉腫とも共通している. 現時点では細胞診・生検組織診による早期発見が最も有効な治療手段である.

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