日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
腹膜転移をきたした副鼻腔原発悪性黒色腫の1例
腹水細胞診所見を中心に
高橋 久美子中村 泰行佐熊 勉
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 42 巻 4 号 p. 288-292

詳細
抄録

背景:欧米に比し, 本邦では悪性黒色腫症例の罹患率は低く, さらに体腔液中の細胞像を経験することは, 実際の細胞診業務ではまれと思われる. 今回私たちは腹膜転移を合併した副鼻腔原発悪性黒色腫症例の腹水細胞所見を検討する機会を得た. 貴重な症例と考え, 報告する.
症例:症例は81歳, 女性. 右上顎洞原発の悪性黒色腫の術後経過中, 腹水の貯留をきたし, 腹水細胞診検査で多数の黒色腫細胞が確認された. 腫瘍細胞の核は, 大型の核小体を有し, 細胞質内にメラニン顆粒が多数存在する. また, 少数ながら核内細胞質封入体も確認され, 典型的な細胞像である. ただ, これまでの報告例と異なり, 細胞質の外方への突出 (bleb) を伴う腫瘍細胞も認められた. また, 腫瘍細胞は免疫染色でHMB-45, S-100蛋白陽性であった.
結論:副鼻腔原発悪性黒色腫の経過中, 腹膜転移をきたした症例の腹水中の細胞像を紹介したメラニン顆粒に乏しい症例の存在などがあり, 典型的な像を把握しておくことは重要と思われるまた, 免疫細胞化学的にも検討したので, 併せて報告する.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top