日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺乳頭癌細胞診におけるDU-PAN-2免疫染色の有用性
大金 直樹鴨志田 伸吾佐籐 嘉洋中村 満美子田村 猛梶原 博安田 政実長村 義之亀田 陽一飯田 萬一
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2004 年 43 巻 1 号 p. 14-19

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抄録

目的:甲状腺細胞診標本を対象に, I型糖鎖抗原であるDU-PAN-2およびCA19-9の発現を免疫細胞化学的に検索し, 乳頭癌の鑑別診断におけるDU-PAN-2の細胞学的マーカーとしての有用性について, 両者の比較に基づいて検討した.
方法:組織学的に診断が確定された, 穿刺吸引および手術材料捺印により採取された計58例の甲状腺疾患細胞標本 (乳頭癌30例, 濾胞性病変15例, その他13例) を対象とし, DU-PAN-2およびCA19-9の発現を免疫細胞化学的に検索した. 判定基準は陽性を示す腫瘍細胞が10%以下を+, 10~50%以下を2+, 50%以上を3+とした.
成績:DU-PAN-2およびCA19-9の感度は, それぞれ乳頭癌: 80%, 70%, 濾胞性腫瘍: 0%, 7%その他の病変0%, 15%であり, 両抗原の乳頭癌に対する特異度はDU-PAN-2: 100%, CA19-9: 89%であった. 陽性細胞の多寡と染色性から検討してみると, CA19-9に比べDU-PAN-2の陽性細胞が多く観察される傾向があった. また, DU-PAN-2が陰性の場合, CA19-9陽性細胞は少数であったのに対して, CA19-9が陰性の場合は, DU-PAN-2の陽性細胞が多く認められる傾向があった.
結論:甲状腺乳頭癌においてDU-PAN-2の感度, 特異度はともにCA19-9のそれらよりもやや上回る程度であった. しかしながら, とりわけCA19-9陰性ないし弱陽性例では, DU-PAN-2の陽性細胞が多数認められる傾向がみられ, 甲状腺の細胞学的鑑別診断においてDU-PAN-2は乳頭癌の有用なマーカーとなりうることが示唆された.

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