日本臨床細胞学会雑誌
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肺芽腫の1例
宮平 良満宮本 敬子岩井 宗男角谷 亜紀九嶋 亮治岡部 英俊澤井 聡藤野 昇三
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2004 年 43 巻 1 号 p. 65-69

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抄録

背景:肺芽腫は胎児肺の腺様期に類似した上皮性部分と問葉性部分から構成されるまれな腫瘍で上皮成分は異型性が弱いのが通例である. 今回, われわれは上皮成分に多形性の強調されたbiphasic pulmonary blastomaの症例を経験したので報告する。
症例:80歳, 男, 肺炎にて入院中, 右上肺部にmass lesionの増大を認めたため, 胸腔鏡下右肺上葉の部分切除術を施行した. 術中迅速時の捺印細胞診では腺癌様細胞と肉腫様細胞が混在して認められたことから, 癌肉腫の可能性が考えられた. しかし, 組織所見で紡錘形細胞が束状に配列する像や多形性に富む横紋筋肉腫の像が複雑に混じり合うなかに胎児肺類似の腺管上皮が増生する像が認められたことから肺芽腫と診断された.
結論:肺芽腫は肺腫瘍としてはきわめてまれな腫瘍であるが, 増殖能力が高く, 腺管上皮や間葉系成分の性格によっては予後が異なってくる. 細胞や組織形態のみならず, 免疫学的所見も参考にしながら, より詳細に腫瘍細胞の性格を捉えて診断していくことが重要である.

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