日本臨床細胞学会雑誌
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浅鼠径リンパ節転移の穿刺吸引細胞診で発見された正常大卵巣癌症候群の1例
豊島 将文新倉 仁八重樫 伸生阿部 一之助鎌田 真紀子杉田 暁大田勢 亨
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2004 年 43 巻 2 号 p. 125-129

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抄録

背景:上皮性卵巣癌の転移様式としてリンパ行性転移は播種性転移とならび重要であるが, 臨床的に浅鼠径リンパ節転移で卵巣癌が発見される例は非常にまれである
症例:患者は52歳女性, 左浅鼠径リンパ節腫大を主訴に受診.リンパ節穿刺吸引細胞診にて卵巣原発腺癌が推定された.左鼠径リンパ節生検では卵巣由来の漿液性乳頭状腺癌のリンパ節転移が疑われたため開腹手術を施行した.卵巣は肉眼的に正常大であったが, 左卵巣実質の一部に小結節があり, 病理組織学的に癌細胞の増殖を認めた.免疫組織化学染色ではEMA・Ber-EP4・CK7は陽性, calretinin・vimentin・CK20は陰性であり, 卵巣原発の漿液性乳頭状腺癌の診断が確定した.
結論:浅鼠径リンパ節転移で正常大卵巣癌症候群が発見された非常にまれな症例を経験し, その診断過程をretrospectiveに検討した, 画像上, 腹腔や骨盤内に明らかな病巣が存在せず, 浅鼠径リンパ節転移の腺癌が見つかった場合には卵巣癌の可能性も考慮する必要があると考えられた.

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