2004 年 43 巻 5 号 p. 340-344
背景:乳腺Metaplastic carcinomaの一亜型であるMatrix-producing carcinomaを経験したので報告する.
症例:37歳, 女性, 左乳房腫瘤を自覚して当院を受診. 穿刺吸引細胞診は検体不適正であったが, 触診や画像診断で悪性が疑われた. 生検にて腺癌と診断され, 手術が施行された. 組織診は腫瘍辺縁部に浸潤性乳管癌成分があり, 腫瘍の中心部にいくにしたがって粘液様基質が増加し, 粘液型軟骨肉腫様となっていた. 癌細胞と粘液様基質の間に紡錘形細胞が介在せずMatrix-producing carcinomaと考えた. なお, 穿刺吸引細胞診標本では粘液様基質を背景に, 類円形腫瘍細胞が不整集塊状から孤立散在性に出現し, それらの間に移行像を示していた. また, 粘液様基質を腫瘍細胞が取り囲む細胞像が特徴的であった.
結論:乳腺Matrix-producing carcinomaはまれな腫瘍である. 細胞診にて粘液様基質を背景に, 異型の強い腫瘍細胞が集塊状から孤在性に出現する場合は, 本組織型も念頭におく必要があると思われた.