日本臨床細胞学会雑誌
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尿中に腫瘍細胞が出現した前立腺神経内分泌癌の2例
多田 慶子三井 邦洋三田 明子佐野 仁勇中村 宣生森山 正敏
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2004 年 43 巻 6 号 p. 370-375

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抄録

背景:前立腺癌の経過観察中に神経内分泌癌が尿中に出現した2例を経験したので報告する.
症例:1) 70歳, 男性, PSA高値で針生検を施行. 低分化腺癌と診断され, 病期B2でホルモン療法によりPSA値は正常化した. その2ヵ月後排尿障害が出現し, 尿細胞診が陽性となり生検で神経内分泌癌と診断された. 膀胱・精嚢浸潤あり, 放射線療法を行うも肝・骨転移あり全経過約1年で死亡.
2) 74歳, 男性, PSA高値で針生検を施行. 中分化腺癌と診断され, すでに精嚢浸潤, リンパ節転移あり病期D1と判定されたが, ホルモン療法が奏効し腫瘍は縮小, PSAは正常化. 4年後に再発し尿細胞診が陽性となり, 生検で神経内分泌癌と診断された. 放射線・化学療法が奏効し, 神経内分泌癌と診断されてから5年後の現在再発を認めていない.
細胞像は2例とも同様所見で, 腫瘍細胞はN/C比が大きく, ときには裸核状で, 孤立散在性, 一部インディアンファイル状配列を認め, 対細胞や木目込み状配列がみられた. クロマチンは濃縮状あるいは微細顆粒状に増量を示した.
結論:前立腺癌の経過中における尿細胞診で小型異型細胞が観察される際には, 腺癌細胞の神経内分泌細胞への分化も念頭におき, 核所見・配列の特徴を見落とさないことが重要と考えられた.

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