日本臨床細胞学会雑誌
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腎オンコサイトーマの3例
細胞質内空胞所見を中心に
沼田 奈々関 知之星川 咲子風間 暁男高木 正之中 英男田所 衛
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2005 年 44 巻 4 号 p. 219-223

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抄録

背景:比較的まれな良性腫瘍である腎オンコサイトーマを3例経験し, その細胞学的特徴を, 腎細胞癌との比較を含め, 細胞質内空胞を中心に観察したので報告する.
症例:年齢は50~73歳で男性2例, 女性1例で, いずれも自覚症状はなく, 健康診断や人間ドックなどで偶然に発見された.
腫瘍細胞は, 疎な結合性から孤立散在性に出現し, 多辺形ないし類円形で, 比較的広い好酸性顆粒状の細胞質を有していた. 核は中心性, 類円形で, 顆粒状のクロマチンが均等に分布し, 分裂像は認められなかった. 全体的に均一で異型性に乏しいが, 一部大小不同や軽度核異型を示す細胞が散見された. また, 細胞質内空胞が目立ち, 約49%の細胞にみられ, これらの細胞質内空胞は電顕写真において疎な微絨毛を伴う腺腔としてみられた. なお, オンコサイトーマと鑑別が困難とされる腎細胞癌 (嫌色素細胞癌, 顆粒細胞癌, 乳頭状腎細胞癌, 各1例) の腫瘍捺印標本における細胞質内空胞出現率は, おのおの0.3%, 0.7%, 0.3%であった.
結論:オンコサイトーマは, 異型に乏しい好酸性細胞が均一に出現し, 比較的高率に細胞質内空胞を認める点が特徴的であると思われる.

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