2005 年 44 巻 5 号 p. 284-290
目的:乳腺穿刺吸引細胞診で観察される壊死物質について診断上の評価と問題点について検討した.
方法:組織学的に診断が確定した乳腺細胞診症例906件 (悪性524件, 良性382件) を対象とした.
成績:壊死物質が観察された標本の873%は悪性病変であり, 非浸潤性乳管癌と乳頭腺管癌 (ともに面庖癌) が多かった. 壊死物質とともに石灰化小体がみられた例はすべて悪性病変であり, 多数の石灰化小体を伴う例の95%は面庖癌であった. 良・悪性を問わず梗塞性病変では, 壊死物質とともに立方状, 多角形, 紡錘形など多様な形態を示す変性細胞や核濃縮細胞, ghost細胞が観察された. また壊死物質と鑑別の紛らわしい壊死様物質について述べた.
結論:変性細胞や壊死物質を認める標本ではviableな細胞で診断する. 壊死物質および壊死様物質が観察される標本の判定と取り扱いについて乳腺細胞診新報告様式に基づく診断フローチャートを提案し, その評価法について述べた.