2006 年 45 巻 1 号 p. 12-16
背景:超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診にて膵内分泌腫瘍と診断し, 病理組織学的に非機能性膵内分泌癌と診断された1例を経験したので報告する.
症例:50歳代の女性.腹部超音波にて膵体部に23×29mm大の腫瘍を認めた.血液生化学検査および膵液細胞診に異常所見はなかったため, 超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診が施行された.腫瘍細胞は集塊状および散在性に多数出現し, 血管内皮細胞を伴う集塊も散見された.腫瘍細胞は小型円形を呈し, N/C比の増加, 穎粒状の核クロマチンが観察された.これらの細胞像により膵内分泌腫瘍と診断し, 腫瘍摘出術が施行された.腫瘍は病理組織学的にリボン状および索状に配列し, 毛細血管が介在していた.電子顕微鏡で神経内分泌穎粒が認められ, 免疫組織化学にて神経内分泌への分化が確認された.腫瘍は部分的に周囲膵組織へ浸潤し, 血管侵襲もみられたため, 非機能性膵内分泌癌と診断した.
結論:膵腫瘍における超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診は細胞変性を最小限に抑え, 細胞採取量も確保されるため診断的価値は高い.