日本臨床細胞学会雑誌
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多形腺腫における筋上皮細胞の多様性
特に電子顕微鏡的および免疫組織化学的検討を中心に
加藤 拓松本 敬高橋 久雄徳泉 美幸諏訪 朋子清水 辰一郎上原 敏敬久山 佳代山本 浩嗣
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2006 年 45 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

目的:多形腺腫の特に筋上皮細胞の多様性を確認するために, 電子顕微鏡的および免疫組織化学的検討を行った.
対象:細胞学的および組織学的に多形腺腫と診断された5例に, 電子顕微鏡的観察および免疫組織化学的染色 (cytokeratin, GFAP, vimentin, S-100, SMA) を行った.
結果:(1) 多形腺腫の構成細胞は腺管細胞とそれ以外の細胞に分類でき, 腺管細胞は正常唾液腺の介在部腺管細胞に, それ以外の細胞は正常筋上皮細胞と所見が類似した.(2) 腺管以外の細胞は多様な細胞変化がみられ, 結合性の類円形~ 短紡錘形細胞はdesmosome結合が多く観察され, またcytokeratinに弱陽性を示し上皮性性格をもっていた.(3) 結合性が乏しく, 剥離性の紡錘形~ 扁平化生様細胞は正常筋上皮細胞と所見が最もよく一致した.(4) 粘液腫様背景にみられる星状~小円形細胞はpinocytotic vesiclesやglycogenなどが発達し, proteoglycan穎粒の産生がみられ, 軟骨化生様細胞に類似した.またGFAP, vimentin, S-100が陽性を示し多様な問葉系性格を呈した.(5) 時に腺管細胞の一部にglycogen, intermediate filamentの豊富な予備細胞または筋上皮細胞と思われる細胞が観察された.
考察:この腫瘍の発生由来には唾液腺介在部の細胞が関係していると考えられた.特に多様な細胞変化は腫瘍性筋上皮細胞が主体を占め, この細胞は形態の多様性とともに性格の多様性もみられた.

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