日本臨床細胞学会雑誌
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乳頭に限局した浸潤性乳管癌の1例
熊木 伸枝鍛代 久美子佐藤 嘉洋小俣 芳彦相原 乃理子梶原 博梅村 しのぶ長村 義之
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2006 年 45 巻 3 号 p. 184-188

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抄録

背景: 乳頭部を原発としそこに限局する浸潤性乳管癌はまれである.乳頭分泌を伴いその細胞診にて悪性細胞が認められた1例を報告する.
症例: 75歳, 女性.左乳頭の腫瘤, 痛みおよび血性乳頭分泌物を自覚し当院を受診した.左乳頭は直径約2.5cm大に腫大.乳頭分泌物細胞診では, 壊死物質を背景に, 腫大した不整な核をもつ腫瘍細胞の集塊が認められた.配列の乱れや重積性も高度で核小体も目立った.腺癌と診断され, MRIで乳頭下乳管内への進展が疑われたため, 乳房切除術・腋窩リンパ節郭清が施行された.組織学的には壊死を認め, 細胞質は豊かで高度な異型核をもった腫瘍細胞の充実性増殖がみられた.他の乳腺組織に病変はなく, 乳頭限局の浸潤性乳管癌と診断した.
結論:乳頭部やその表皮近傍に主座のある腫瘍または乳管内進展の著明な乳癌においては, 乳汁細胞診中に悪性細胞が出現する場合がある.乳頭部の限局性病変としては乳頭部腺腫の頻度が高く, 良悪の鑑別診断が重要とされる.悪性の場合でも組織型の推定は困難なことが多い.したがって肉眼および画像所見などを併せて総合的に判断し, 組織学的診断を行うことが望ましいと考える.

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