日本臨床細胞学会雑誌
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内膜細胞診で診断しえた結核性腹膜炎の1例
長谷川 徹山川 義寛柴野 亜希子近谷 昌恵松井 一裕舘野 政也
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2006 年 45 巻 3 号 p. 189-193

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抄録

背景: 性器結核はまれな疾患であるが, 付属器腫瘤を形成した場合, 付属器悪性腫瘍との鑑別が問題となる.今回, 悪性腫瘍との鑑別を要した性器結核・結核性腹膜炎を経験したので報告する.
症例: 53歳, 女性.下腹部痛と性交時痛を認め近医受診し, 両側付属器腫瘤および腹水を指摘された.また子宮内膜細胞診にて結核性病変を疑われ, 精査加療目的にて当科紹介となった.画像診断では両側付属器腫瘤および腹水を認めた.子宮内膜細胞診では, 多数のリンパ球を背景にラングハンス巨細胞や類上皮細胞を認めた.子宮内膜組織診では類上皮肉芽腫, ラングハンス型多核巨細胞を認めた.結核菌検査では子宮頸管粘液培養および子宮内膜キャピリアTB陽性であり, 性器結核・結核性腹膜炎と診断したが, 付属器悪性腫瘍の可能性も念頭におき子宮全摘術および両側付属器摘出術を施行した.摘出標本では子宮内膜, 両側卵管およびその周囲には類上皮細胞肉芽腫があり, 一部のものは中心壊死を伴っていた.悪性所見は認められなかった.術後, 抗結核薬治療を6ヵ月継続し, 腹水貯留など再燃徴候は認めていない.
結論: 付属器腫瘤を形成した性器結核・結核性腹膜炎では, 悪性腫瘍との鑑別が困難な場合があり十分な注意が必要である.

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