背景:日常的には鏡検する機会の少ない副甲状腺腫瘍の細胞診を経験したので, 副甲状腺過形成および他に鑑別を要する甲状腺疾患の細胞像との比較検討を試みた.
症例:49歳, 女性.46歳時に人工透析に伴う腎性副甲状腺機能亢進症を指摘され, 副甲状腺全摘が行われた際, その一部が甲状腺周囲筋肉内に自家移植された.3年後, 甲状腺右葉から峡部にかけて鶏卵大の低エコー領域を認めたため穿刺吸引細胞診を施行, 小型円形核に粗顆粒状の核クロマチンを有する細胞のシート状または重積性のある集塊が得られた.既往所見等から副甲状腺関連病変の再発を疑ったが, 細胞像のみからは良悪性の鑑別は困難であり, 手術材料の組織学的所見および免疫染色所見より, 自家移植された過形成組織を母地として発生した副甲状腺腫瘍と考えられた.
結論:副甲状腺疾患の良悪性の細胞診での判定は困難であるが, 副甲状腺疾患の既往や甲状腺疾患細胞の鑑別点に注意することにより診断が可能と思われた.