日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
原著
口腔がん患者における放射線治療に伴う味覚変化・口内反応と食物特性に関する基礎的研究
大釜 徳政吉永 喜久恵江川 幸二北川 恵山本 かよ田中 幸江
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2006 年 20 巻 2 号 p. 51-60

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抄録

要 旨

本研究は,放射線治療を受けることにより,味覚変化・口内反応を抱える口腔がん患者の食思傾向に影響を及ぼす食物特性を明らかにすることを目的とした.照射終了後7日以内の患者13名を対象として半構成的面接を実施し,得られた資料を質的帰納的に分析した.分析の結果,放射線治療を受ける対象者の食思傾向に影響を及ぼす食物特性は,【テクスチャー[食感]】【味付け】【温度】【食形態】【匂い】の5要因であった.30~40Gyにおいて対象者は,味覚変化を最も顕著に自覚し,この時期の食思傾向に影響を及ぼす食物特性は【テクスチャー】【味付け】【温度】【匂い】であった.これらの要因は,対象者の治療以前の【嗜好性】から影響を受けていた.50Gy~治療終了7日では口腔内疼痛を最も顕著に自覚し,疼痛悪化とともに口腔内乾燥に対する自覚も高まる傾向にあった.この時期の食思傾向に影響を及ぼす食物特性は,【テクスチャー】【温度】【食形態】であった.また60Gy~治療終了7日では【匂い】が食思傾向と高い関連性を認め,食物における特有の匂いの強さが食思傾向を低下させた.なお味覚変化・疼痛・口腔内乾燥と食思傾向に影響を与える食物特性および嗜好性との関連性は,日内変動から影響を受けることも明らかとなった.本結果から,口腔がん患者の食事やその調理に際しては,照射線量と食物特性および嗜好性との関連性や,日内変動による影響に留意する必要があることが示唆された.

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2006 一般社団法人 日本がん看護学会
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