日本がん看護学会誌
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原著
化学療法を受けたがん患者の倦怠感の特性
平井 和恵神田 清子
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2006 年 20 巻 2 号 p. 72-80

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抄録

要 旨

本研究の目的は,化学療法を受けたがん患者の倦怠感の特性を明らかにすることである.11名の対象との非構造化面接によりデータを収集し,質的帰納的分析を行った結果,次のことが明らかになった.

1.化学療法を受けたがん患者の倦怠感は,【倦怠感の経験】【倦怠感に対するセルフケア】【影響要因】の3つの要素が,連続的に相互に作用するプロセスの中に経験されるものであった.

2.【倦怠感の経験】は,《日常的な動作を行うことへの消耗感》《活動に対する意欲の減退》《活動性の低下》《自分の心身に対する違和感》《抵抗できないほどの眠気》《持続的な感覚》《狭い範囲での軽い活動では自覚しない感覚》《家庭生活に戻り活動量が増えたときに知覚する,活動耐性の低下》《心理社会的な負の影響》という特性があった.

3.【倦怠感に対するセルフケア】は《休息または活動量の調整によるエネルギー消耗の制限》《自己の高揚および一般的な健康増進行動の実践によるエネルギーの獲得》《気分転換によるエネルギー消耗の制限およびエネルギーの獲得》《活動のためのエネルギーの維持》に特徴づけられる行動であった.

4.【影響要因】は,《身体的要因》《精神的要因》から構成された.

患者が知覚した倦怠感の主要な側面はエネルギーの枯渇感に特徴づけられ,その存在自体が苦痛であると同時に,自己コントロール感の喪失や心理社会的影響などによる苦痛を招くものであった.本研究結果より,化学療法を受けたがん患者の倦怠感をアセスメントする視点,セルフケア教育の方向性,影響要因に対する積極的介入の必要性が示唆された.

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2006 一般社団法人 日本がん看護学会
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