日本がん看護学会誌
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研究報告
化学療法に伴う嗅覚変化ががん患者の食事摂取およびQOLに及ぼす影響
木村 安貴砂川 洋子
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2009 年 23 巻 2 号 p. 23-32

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抄録

要 旨

本研究は,化学療法治療経過に伴う嗅覚変化の実態,嗅覚変化が患者の食事摂取およびQOLに及ぼす影響を明らかにするために,化学療法を受けるがん患者31名を対象とし,嗅覚閾値の客観的指標としてT&Tオルファクトメーターを用いて治療前,治療開始3日目,7日目,治療終了後2週目の計4回調査を実施した.

化学療法開始に伴い,嗅覚変化を自覚した者の割合は,治療開始3日目が35.5%と最も多く,その嗅覚変化の具体的内容(複数回答)は「においに対して敏感になった」が66.7%と最も多く,次いで「不快なにおいを感じるようになった」50.0%の順であった.客観的指標による嗅覚閾値の測定結果,においに対する感受性を示す検知閾値変化率は治療開始7日目では有意に低下し,においの識別能を示す認知閾値変化率は上昇する傾向にあった.また,女性において,認知閾値変化率は治療開始3日目に有意に上昇していた.嗅覚変化を自覚した者の食事摂取率およびQOL得点は,自覚していない者に比べ有意に低かった.また,認知閾値変化率は食事摂取率,食欲得点およびQOL得点との間で有意な負の相関が認められた.

これらのことより,化学療法治療経過に伴い,がん患者はにおいに対して敏感になり,さらに女性ではにおいに対する識別能が低下していることが明らかとなった.このことより,副作用症状としての嗅覚変化は,本来のにおいとは異なるにおい,不快なにおいとして認知することで,食事摂取およびQOLに影響を及ぼすことが示唆された.

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2009 一般社団法人 日本がん看護学会
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