日本がん看護学会誌
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研究報告
初回化学療法を受ける肺がん患者のエンパワーメントの過程
髙橋 靖子稲吉 光子
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2011 年 25 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

要 旨

本研究の目的は,初めて化学療法を受けながら生活する肺がん患者が,自己効力感を高めその人らしく生きるためにエンパワーメントを促進する対話面接を行い,患者の変化の過程を明らかにすることである.参加者は研究参加に同意の得られた告知後初めて化学療法を受ける50~60歳代男性患者3名であった.研究方法は質的帰納的デザインで,Freireのエンパワーメント理論に基づいたChangらの対話面接に一部修正を加えたものを使用した.面接の逐語録と研究者の自己内省ジャーナルを記述データとし,一事例ずつコード化,サブカテゴリー化ののち,参加者共通の類似性や相違性を検討しながらカテゴリー化した.研究者の内容は対参加者別に分析し,エンパワーメント理論をもとにコード化,サブカテゴリー化した.さらに,対参加者共通の類似性や相違性を検討しながらカテゴリー化した.参加者と研究者の両者のカテゴリーは,変容という視点から局面として経時的に位置づけた.参加者に共通する変化の過程は,局面1:パートナーシップの開始,局面2:パワーの低下の表出,局面3:自己の意識化,局面4:自己効力感の回復,局面5:肺がん治療に向けたパワーの回復の5つであった.この過程では,がん患者の「自己の意識化」は欠くことのできない局面であることが既存の研究同様に明らかになった.また診断から治療を受け入れる短い期間でも,患者が「新たな自信」を得られるような看護師との相互変容の重要性が示唆された.

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2011 一般社団法人 日本がん看護学会
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